楽譜に「Andante(アンダンテ)」と書いてある。「歩くような速さで」という意味だってのは知ってる。でも、いざメトロノームを出すときに「じゃあ、何BPMに設定すればいいの?」で、ちょっと立ち止まったこと、ありませんか?
結論から言います。アンダンテのBPMは、情報源によって63〜76、72、あるいは76〜86までバラバラ。実はこれ、ちゃんとした理由があるんです。この記事では、音楽学習者が直面するこの「曖昧さ」の正体を、一次情報をもとに整理しました。あなたのメトロノーム練習が、今日からちょっとだけ納得感のあるものになるはずです。
アンダンテのBPM、実は情報源によってここまで違う
まずは、具体的な数値の違いを見ていきましょう。
- 一般的な楽典や多くの日本語サイトでは、♩=63〜76とされています。
- 一方、CASIOの電子ピアノ(AP-300やAP-S200)の公式マニュアルでは、速度標語のひとつとしてアンダンテが72 BPMという固定値で定義されています(CASIO公式サポートページ、製品マニュアルより)。
- さらに英語圏のメトロノーム専門サイトでは、アンダンテを76〜86 BPMと位置付けている例もあります(True Metronome)。
「63〜76」と「72」はまだ近いですが、「76〜86」になるとかなり開きがあります。同じ「アンダンテ」を名乗りながら、これだけの開きがあるのはなぜでしょうか?
CASIOが「72」を採用する理由
カシオの電子ピアノには、速度標語ボタンが搭載されているモデルがあります。「アンダンテ」ボタンを押すと、自動的にテンポが72 BPMにセットされる仕様です。これは、あくまで製品のプリセット値として「このテンポで練習を始めてください」という目安を提供しているにすぎません。ただし、この固定値の存在が、初心者の方に「アンダンテ=72」という刷り込みを与えてしまう側面もあるでしょう。
英語圏のサイトが「76〜86」を唱える背景
英語圏の解説では、アンダンテを「歩行ペース」と定義し、76〜86 BPMというレンジで示すことがあります。これは、人の「歩く速さ」にも個人差があるように、音楽表現としても幅を持たせようという考え方に基づいています。実際、音楽の世界では「アンダンテは遅いテンポと中程度のテンポの間にある、自然なホームベースのようなもの」と表現されることもあります(True Metronome)。
アンダンテの本当の意味は「速さ」より「動き」にあった
なぜここまで解釈が分かれるのか。それは「アンダンテ」という言葉が、そもそも絶対的なBPMを指す言葉ではなかったからです。
アンダンテはイタリア語の動詞 andare(行く)に由来します。「歩くような速さ」という訳はよく知られていますが、より本質的には「前に進む感じ」「流れるような動き」を表しています。つまり、アンダンテが指示しているのは「何BPMか」ではなく、「どういう質感で進むか」なのです。
実際、楽典上の標準的な解釈でも、アンダンテは63〜76というレンジで示されることがほとんど。これは「幅のある目安」として理解されるべきであって、「絶対的な値」ではありません。
「アンダンテは遅いの?」という根本的な疑問
ここでよく湧く疑問が「アンダンテは遅いテンポなのか?」という点です。
CASIOのマニュアル上の位置付けを見ると、Largo(46 BPM)やAdagio(56 BPM)よりは速く、Moderato(96 BPM)よりは遅いので、「中間よりやや遅め」という位置づけです。
一方、英語圏の見解では「遅いテンポと中程度のテンポの間にある自然なベース」という表現を取ります。つまり、何と比べるかによって「遅い」のか「中間」なのかが変わる、というのが実態です。
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ここが知りたかった!アンダンテ練習のリアルなつまずきポイント
SNSやQ&Aサイトでは、アンダンテに関する「速度標語クイズ」のような投稿が散見されますが、残念ながら「アンダンテのBPMで困った!」という具体的な体験談を収集することはできませんでした(Xにて2026年8月30日確認)。ただし、音楽学習者のつまずきとしてよく聞かれるのは、「先生が言うアンダンテと、家で鳴らすメトロノームのテンポが合わない」という感覚のズレです。
このズレは、まさに今回見てきた定義の揺れに起因します。先生がイメージしているアンダンテが76 BPMで、教則本が63 BPMだったら、当然違って聞こえますよね。どちらが正しいかではなく、解釈の違いとして理解することが、最初の一歩です。
じゃあ、メトロノームは何BPMに設定すればいいの?
ここまで読んで、じゃあ実際どうすればいいんだ、という話ですよね。結論から言うと、以下の3ステップで設定するのがおすすめです。
1. 目安として「72」を出発点にする
CASIOのマニュアル値である72 BPMは、さまざまな解釈の中でも最も「無難な中央値」です。まずはこのテンポでメトロノームを鳴らし、楽譜をさらってみましょう。
2. 曲の雰囲気に合わせて「63〜76」の範囲で調整する
どうしても速すぎる・遅すぎると感じたら、このレンジ内で微調整します。ゆったりした抒情的な旋律なら65 BPM前後、逆に動きのある伴奏形なら74 BPMくらい、といった具合です。
3. 最終的には「自分の音楽」を信じる
ブラームスがメトロノーム記号を嫌ったのは有名な話です。機械的な正確さよりも、音楽的な流れやフレーズの頂点をどう表現するかが大切だ、という考え方ですね。アンダンテは「歩く」こと自体が目的ではなく、「どこへ向かって歩くか」が本質です。
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アンダンテがわかると、他の速度標語も見えてくる
アンダンテのBPMが整理できると、他の速度標語との相対的な関係もクリアになります。CASIOのマニュアルを参考にすると、以下のような位置関係です。
- Largo:46 BPM
- Adagio:56 BPM
- Andante:72 BPM
- Moderato:96 BPM
- Allegretto:108 BPM
(CASIO公式サポートページ、製品マニュアルより)
このように見ると、アンダンテは「遅い群」と「速い群」のちょうど境目あたりに位置しているのがわかります。だからこそ、「遅い」のか「中間」なのかで意見が分かれる。納得ですよね。
まとめ:アンダンテの正体は「数値より感覚」、そしてあなたの耳が判断する
アンダンテのBPMは情報源によって異なりますが、それは「どれが正解か」ではなく、「どの解釈を採用するか」の問題です。大切なのは、メトロノームの数値に振り回されすぎないこと。数値はあくまで出発点であり、最終的にはあなたの耳と、弾いていて気持ちいいテンポが「その曲のアンダンテ」です。
CASIOの電子ピアノ(AP-300やAP-S200)をお持ちの方は、72 BPMを最初の基準にするのも良いでしょう。ただし、それが絶対ではないことも覚えておいてください。
「歩くような速さ」は人によって違う。同じ曲でも、指揮者やピアニストによってテンポが変わるのは当たり前です。アンダンテを弾くときは、「このテンポで、どこに向かって歩いているんだろう?」と想像してみてください。きっと、メトロノームの数字以上のものが見えてくるはずです。






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